Le 20 avril 2007
朝早くホテルを出て、ボルドー駅行きのトラムに乗るためチケットを買おうとするがトラムC線の前にある2つのチケット自動販売機は両方故障していて、チケットが買えない。結局、他のラインの自動販売機でチケットを買い事なきを得たが、時間が迫っていたらかなりあせっていたと思う。
ボルドー・サン・ジャン駅構内
2eme class(2等席)の車両
Voiture(車両)の位置と現在地を確認する電光掲示板
次の目的地はBayonne(バイヨンヌ)。ボルドーからバイヨンヌの車窓は、のっぺりとした田舎の風景で期待に反し随分退屈だった。バイヨンヌに到着し、ロッカーにバックパックを預けようと案内所で尋ねるも、コインロッカーも荷物預り所もないという。ここバイヨンヌでは既にパリ行きのチケットが購入済のこともあり、正午から約午前0時までの12時間を過ごさなければならなかったためバックパックを背負ったまま街を散策することは考えられなかった。駅近くに見つけた2件のホテルで荷物を預かってもらえないかと交渉するが断られ(手数料を払うと条件を出しても駄目だった)、肩に食い込むバックパックを背にトボトボと歩いていると「Ibis」(イビス)の看板を見つけた。イビスはボルドーで泊したアーコールホテルグループの中級ホテルで、駅からは少し歩くようだったが、駄目元で頼んでみようと向かってみる。これで断られたら宿泊料を払ってでも置いてもらおうかというくらい私の肩は悲鳴を上げていたため、イビスで快くOKの返事が貰えたときには涙が出そうだった。
結局、イビスの受付の方は荷物の預かり以外に、バイヨンヌの地図やここから近いビアリッツという海岸のある街の地図、バスの時刻表など色々取り揃えて説明してくれた。あまりに親切な対応に、今後はアーコールホテル一本でいこうかと思ったほどである。
肩も軽くなり、暖かい対応に気持も軽くなったため、はずんだ足取りでバイヨンヌの中心街へ足を向ける。
フランスとスペインの国境にまたがるこの地方はバスク地方と呼ばれ、独特の文化と言葉を持ち、政治的にもかなり孤立した自治を有し独立運動も活発化している。このため、かなりナイーブな面を併せ持つこの地方だが、バイヨンヌの街には何があっても動じることのない力強さのようなものがあり、その大らかなたたずまいにあたたかいものを感じる。
バイヨンヌを歩いていて気付いたことがある。
それは窓から洗濯物が干されているということ
フランスの全ての町を訪れたわけではないので、もしかしたらそれほど珍しいことではないのかもしれないが、始めて見た光景だった。そんな庶民的な風景もバイヨンヌの味わい深さなのかもしれない。
バイヨンヌの風景
バイヨンヌのマカロンとチョコレート
バイヨンヌ風サラダ
一通り街を周ってみると、バイヨンヌはそれほど大きくないことに気付く。夜までここにいるのもどうかと、海辺のある「Bializ」(ビアリッツ)に行くことを思い立ち、イビスの人に教えてもらったバス停(「Mairie」(市役所)の横)でビアリッツ行きに乗る。
・バイヨンヌ⇔ビアリッツ Ligne1 片道35分程 1.3ユーロ
ビアリッツはいかにもリゾート地の風体をかもしだし、立ち並ぶ建築も高級住宅が多く、街自体も洗練されているようだった。それほど遠くもない場所なのにバイヨンヌと随分雰囲気が異なるのがおもしろい。
私はというと、ここへ来て海が見られたことに異様に感動してしまった。
ビアリッツの浜辺
海岸は砂浜で、それが砂なことを除いてはニースとよく似ている。海では若者がサーフィンもどきのことにふけっていて、多くの人は浜辺に寝そべってただ肌を焦がしている。
堤防に座って1時間半ほど海を眺めていると、太陽が雲にかくれて急に冷え込んだため、皆帰り支度を始めた。それにならい私も腰を上げ、しばらく街を散歩した後、もう一度バスにのってバイヨンヌに戻る。
バイヨンヌに到着したのは19時30分過ぎ、まだ0時までにはたっぷりと時間があったため街をフラフラとしていると、大きな板を抱ええっちらほっちらと坂をあがる人に声をかけられた。
「
ボンソワー」(こんばんは)
笑顔でお返しの「
ボンソワー」
すると、重そうなその板をかかえたまま降りてきて
「
プヴェ ヴ メプゼ?」(結婚してくれませんか?)
いきなりのプロポーズである。
フランスでは、からかい半分、冗談半分でこの言葉を口にしている人を何度か見かけたことがある。他の街ならば黙ってやり過ごしたかもしれないが、人の良さそうなその表情を見て、この冗談に付き合ってみることにする。
「
ノン!セ ラ プルミエフォア ク ヌ ヌ ソム コニュ」(いいえ!今日初めて会ったのではないですか)
「
メ、ス ネ パ アン プロブレム!ヴ ヌ プヴェ パ メプゼ?」(でも、そんなの大した問題じゃないよ。結婚してくれないの?)
このときにはひざまずく演出付きで、二人の演技にも拍車がかかる。一緒にいた彼の友人らしき人は坂の上で笑いながらあきれ顔である。
「
ノンノン・・・ジュ コア ク ヴ ヴ ゼット デジャ・・・」(ダメダメ・・・それに、あなたもう既にしてるんじゃないの?)
「
ノーン、ホギャルド。ジュ ヌ ポフト パ (ドゥ バッグ)。アン ランデヴ シルヴプレ」(そりゃないよ~、見てよ。指輪どこにもしてないでしょ?1回でいいから約束しない?)
「
ア、ボン。メ、 ジュ ドア パフティー ア パリ ス ソワ、デゾレ」(あ、そうなの。でも私今夜パリに発たないといけないの。ごめんね)
「
ジ ヴェ!」(僕も行く!)
「
ノーン、セ パ ラ ペンヌ。メ、メルシーボークー、オヴァー」(冗談、必要ないよ(お気持だけ)。でも、(冗談でも)ありがとね、さよなら)
「
メ、ボン。ヌヴリエ パ ヴォ スリール。ジュ パン イシィ、ヴ プレ ム トゥルヴェー ラ プロシェンヌ フォア」(ん~、分かったよ。その笑顔忘れないでよね!僕、絵を描いてるんだ、次来ても見つけられるよ)
「
オラ、ジュ パン オシー」(え、そうなの?私も絵を描くんだよ)
コレを言ったために、もう一度最初に戻ってしまい、彼は友人に向かって「聞いたかい?絵を描いているんだって」といったあとすかさず
「
プフコア ヴ ヌ プヴェ パ メプゼ?」(どうして、僕と結婚できないの?)
おどけたその仕草に思わず二人とも笑ってしまう。
お互いに冗談を言い合っているのが分かっているので、「
チャオ」(それじゃ)と軽く挨拶を交わし彼等は坂を登り、私は坂を下った。
夜は教会の横のクレープリーですこぶる美味しいガレットをいただく。
ハム、チーズ、きのこ、卵、トマトソースのガレット
夜もふけ、預けたバックパックのお礼をいいながらイビスを後にし、パリ行きの電車に乗る。
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