Le 25 avril 2007
今日は、サンジェルマン・デプレ界隈にあるフェイサルの働くギャラリーに出向いてみることにする。あいにく、展示会は昨日で終了し(どうやらロボットの展示会だったらしい)、今は何もないが来てもよいとのことだったので、折角だからと邪魔することにする。
サンジェルマンに着き、少し時間があったので有名な「Cafe flore」に入る。高いことは覚悟していたが、コーラやペリエなど清涼飲料水までが高いのを見て、ここがサービスありきのお店なのだとあらためて思う。結局、フローラ特製の「Chocolat」(ココア)を注文。特製なのにコーラとあまり変わらない値段ならば、やはりコレを飲みたい。きっとここに来る客は値段なんて気にせず頼んでいるのだろう、みな優雅にその場所の雰囲気を楽しんでいる。
フローラ特製ココア 7ユーロ
結論から言うと、味は最高だ。
濃厚だけれどくどすぎない絶妙なバランスで、カップ3杯分はたっぷりある。そして、サーバーのマナーもそのココアに引けを取らないくらい素晴らしい。パリに来たらやはり一度くらいは美味しいココアを飲むのもいいかもしれない。
フェイサルのギャラリーは少し奥まったところで、周りもほとんどがギャラリーという場所にあった。展示会をやっていないせいか、ドアは閉められ鍵がかかっていたので入れず、途方にくれていると、ドアの横にガムテープをみとめた。ガムテープは少し盛り上がり、下がボタンのようになっていることを想像させた。
ためしにガムテープの上からグッと押してみたが、何も変わらない。どうしたものかと悩んでいると、中からフェイサルが出迎えにきてくれた。
「
あれ?フェイサル、どうして私が来たの分かったの?」と聞くと「
だって、君がベルを鳴らしたんじゃないか」と返ってきた。私が押したのは、どうやらドアベルだったようだ。
何もないといわれていた通り、ギャラリー内はガランとしており昨日まで展示会をしていたとは思えないほど綺麗に片付けられていた。入り口の狭さに比べて中は非常に広く、天井も高いため、展示会場としてはもってこいの場所ではないかと思う。
ビデオ作品を1つ見せてくれるというので、画面の前に座りヘッドホンをかける。
すると、作品らしきものが始まり、何人かの登場人物が日常に良くありがちな出来事を語っている。ただ、途中日本人が登場したときの話の内容は尋常ではなかった。最初は2人が経営しているお店の話、それから夫婦仲についての話にうつり、その後二人の赤ん坊の話になる。抜粋するとこんな感じである
妻「
そうそう、前ね、赤ちゃんがね、いたんだけどねぇ」
夫「
あ~そうそう」
妻「
連れてかれちゃってねぇ あんときは悲しかったねぇ」
夫「
そうだね、結構つらかったね」
妻「
ま、でも今は、まぁ2人も仲よくなったから、フフフ」
夫「
あー、そうだね、まぁ大分ね」
話は淡々と赤ちゃんの誘拐が1つの通過点でもあるかのように語られている。
私は最初この作品をドキュメンタリーと思って見ていたので心底びっくりしたが、後で聞いてみると一般人が他の人の身に起こったことを演じているのだと聞き、肩をなでおろした。
フェイサルに話の内容は大体分かるが、何がテーマなのか分からないと言うと、「現代」との答え。そういわれるとなんとなく納得できる内容だった気がするから不思議なものである。
近くにあったギャラリーの昆虫の挿絵が美しい額
ところで、今住んでいる番地の名前は「La villa」(庭付きの邸宅)である。折角だから、今後は邸宅と紹介しようと思う。
邸宅に帰ると、フランス人のシモンと韓国人のスルギがソファーに座って話し込んでいた。声をかけると、今日は何をしてきたのか?と聞かれたので、一日見たものや思ったことを話す。折角の機会だからと日本から持ってきた展示会の作品集を見せると、スルギも自分のを見せてくれた。シモンは途中で眠くなったと退席した。
彼女はパリ芸術大学で学び、今はアーテイストとして活躍しているようで、写真も造形もインスタレーションも行うようだった。インスタレーションでは何mもある巨大なオブジェをモーターで動かしたり、噴水を作ったりしているようで見ているだけで楽しい作品集だった。
「
NYに行ったときに、ナイフを持って道路を渡ったの。みんな私が何をするかとドキドキ、ワクワクしながら付いてきたわ。途中で警察に思いとどまるように言われたけど決めていたのでそれを実行したの。売店に行ってグレープフルーツを1つ買って、その場でナイフを使って切って食べたのよ。そしたら、みんなすごい歓声と拍手を贈ってくれたわ」
そのときの証拠写真であるナイフを持ったスルギは、とても素敵にみえた。
アートの世界だけで勝負している彼らは、とても強い。控えめだけれど、強い意志を持ったスルギはカッコイイ
。アートだけで生きていくのは決してたやすいことではないだろうけれど、彼らの内面はとても豊かで力強い。私もそうありたいと思った。
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